物語「海風の約束」
今から遠い昔、遥か彼方の海沿いの村にミナという名の少女が住んでいた。
村は海と共に生き、漁業を生業とする小さな集落だった。
人々は日々の糧を海から得て、その恵みに感謝しながら質素に暮らしていた。
ミナは特に故郷の綺麗な海を愛していた。
毎朝、日の出と共に起きると、すぐに海岸へ向かい、波の音に耳を澄ませながら砂浜を散歩するのが日課だった。
彼女の瞳は黒目の村人の中で珍しく、海の青さを映しているように澄んだ青い目をしていた。
そして黒く長い髪は海風を受けてなびいている。
その姿はまるで海の精霊のようで、村の誰もが彼女を愛し、慈しんでいた。
そんなミナには幼馴染のタケという男の子がいた。二人は赤ん坊の頃から一緒に育ち、いつも一緒に遊んでいた。
タケは背が高く、たくましい体つきで、村の若者の中でもひときわ目立つ存在だった。彼の瞳には常に好奇心と冒険心が宿っており、その笑顔は太陽のように明るかった。
タケとミナは幼い頃からお互いに惹かれあい、自然と心を通わせていた。
彼らの親同士もそれを見て、二人を許嫁にすることに決めた。
これは村の伝統でもあり、家族同士の結びつきを強めるための大切な習わしだった。
ある日の夕暮れ、ミナはいつものように海岸で貝殻を集めていた。その時、彼女がタケのもとに駆け寄ってきた。
「タケ、これを見て!」と、ミナは手に持った大きな木の実を見せた。ピンクに熟れた実は、甘い匂いを漂わせていた。
「これは…?」とタケが尋ねると、ミナは興奮気味に答えた。
「これは漂流物よ。さっき海で見つけたの。こんな木の実は見たことないわ」
「美味しそうな匂いがする、食べてみようか?」
タケがそういうとミナもうなずいて、二人で皮をむいて食べてみた。
すると口の中に甘い果汁が広がったかと思うと、なんだか身体に力がみなぎるようだった。
ミナは大きく目を見開いて「きっとこれが常世の果実なのよ!」っと興奮気味に叫んだ。
「常世の果実って、あの海の向こうにあるという常世の国にだけで取れる、不老長寿の実の事?」
「そうよ、タケ。この果実を見つけたということは、常世の国が本当に存在するのかもしれないわ!」ミナは興奮を抑えきれずに言った。
タケの目も輝いた。「もし本当に常世の国があるなら、僕たちで探しに行こう。冒険のチャンスだ!」
その夜、二人は村の静かな浜辺で、出発の計画を立てた。タケは昨日の潮の流れを考え、海のどの方向から果実が流れてきたのかを検討した。
翌朝、二人は日の出と共に出発した。彼らは小さな漁船に乗り込み、果てしない海へと漕ぎ出した。ミナは風を受けてたなびく黒髪を抑えながら、タケと一緒に力強くオールを漕いだ。
数日間の航海の末、二人は広大な海の真ん中で嵐に巻き込まれた。突如として暗雲が立ち込め、激しい雨と風が船を襲った。波は次第に高くなり、船は大きく揺れた。
「タケ、気をつけて!」ミナは叫んだが、風の音にかき消された。
「ミナ、しっかり捕まって!」タケも叫び返したが、波に飲まれて声が届かない。
二人は懸命に船を守ろうとしたが、巨大な波が船を襲い、ついに船は真っ二つに割れてしまった。ミナはタケの手を握りしめようとしたが、その瞬間、激しい波が二人を引き離した。
「タケ!」ミナは必死に叫んだが、暗い海の中で彼の姿は見えなかった。
ミナは波に翻弄されながら、必死に泳ぎ続けた。どれだけの時間が経ったのか分からないが、気がつくと彼女は見知らぬ浜辺に打ち上げられていた。周囲は静まり返り、嵐の痕跡だけが残っていた。
ミナは力なく砂浜に倒れ込み、涙を流した。「タケ、どこにいるの?」と呟きながら、空を見上げた。
その頃、タケもまた別の場所に流れ着いていた。彼は意識を取り戻し、ミナの姿を探したが、見当たらなかった。
「ミナ、無事でいてくれ…」と祈りながら、彼もまた未知の地をさ迷った。
それから何日も経った。ミナは浜辺で見つけた果実や魚を食べながら、タケとの再会を信じて生き続けた。
やがて近くの集落にたどり着つき、優しい村人たちに迎えられてそこで生活するようになった。
一方のタケも、同じように生き延びていた。
タケは断崖に囲まれた孤島に流れ着いたため、他の人々がたどり着けず、また誰も来る者のいない場所へと漂着していた。
幸いに漁の才能が優れていたため、飢えることなくその島で暮らすことが出来た。
その孤島の丘の上には、あの常世の果実と信じた木が生っていた。
二人の心には、いつか再び会えるという希望があり、それを支えに生きていた。
現代の日本
時は流れ、現代の日本。高層ビルが立ち並ぶ大都会、東京の片隅にミナとタケの魂は再びこの世に生まれ落ちた。
彼らは、前世の記憶を持たないまま、それぞれの人生を歩んでいた。
ミナは、都会の喧騒から離れた鎌倉に住む女子高生だった。
青い瞳と長い黒髪は変わらず、彼女の姿はどこか神秘的で、多くの人を惹きつけていた。
幼少期から海を愛し、毎朝日の出と共に海岸を散歩するのが日課だった。
一方、タケは東京の大学で海洋学を学ぶ学生だった。
背が高く、たくましい体つきで、いつも好奇心に満ちた目をしていた。
彼の研究テーマは、海洋生物の生態系で、特に鎌倉周辺の海について詳しく調べていた。
ある夏の日、タケは研究のために鎌倉を訪れていた。
彼は海岸沿いの小さなカフェで休憩しながら、ノートパソコンでデータを整理していた。
ちょうどその時、ミナがカフェに入ってきた。
彼女は注文を終え、窓際の席に座り、持っていた本を開いた。
その瞬間、タケの心に不思議な感覚が走った。彼女を見つめると、何か懐かしいものを感じたのだ。
ミナもまた、タケの視線を感じ取り、顔を上げた。
二人の目が合った瞬間、まるで時間が止まったかのように感じた。
互いに見つめ合う中で、言葉にならない強い絆が芽生えた。
数日後、タケは再び鎌倉を訪れた。
彼はミナに会いたいという強い衝動に駆られていた。
そして、彼女がよく散歩する海岸で、彼女の姿を見つけた。
「こんにちは、君もこの海が好きなんだね」とタケは話しかけた。
ミナは驚きながらも微笑んで答えた。「はい、毎朝ここに来るのが好きなんです。あなたは?」
「僕は海洋学を学んでいて、この辺りの海を研究しているんだ。君の名前は?」
「ミナです。あなたは?」
「タケルです。みんなからはタケと呼ばれているよ」
二人はすぐに打ち解け、海についての話で盛り上がった。
ミナは、タケの知識に感心し、タケはミナの純粋な海への愛に惹かれていった。
それから二人は頻繁に会うようになり、一緒に海岸を散歩したり、カフェで話したりした。
二人の間には、前世の絆が再び芽生えていたが、彼ら自身はそれを自覚していなかった。
ある日、ミナはタケに前世の夢を話した。「最近、よく不思議な夢を見るんです。古い漁村で、私と背の高い男の子が一緒に冒険している夢なんです」
タケは驚きつつも微笑んだ。「僕も似たような夢を見たことがあるよ。海の嵐に巻き込まれて、誰かと生き別れる夢だ」
秋のある日、タケはミナを夕陽が美しい海岸へ連れて行った。
海風が二人の周りをそっと撫でる中、タケは真剣な表情でミナに言った。
「ミナ、僕は君と過ごす時間が本当に幸せなんだ。僕たちは前世でも一緒だった気がする。これからもずっと君のそばにいたい」
ミナの目には涙が浮かんだ。「私もタケと一緒にいると、心が温かくなるの。前世のことは分からないけど、今ここにいるあなたが大切よ」
二人は抱きしめ合い、夕陽が沈む海を見つめた。
海風が優しく吹き、まるで前世の約束が再び果たされたかのようだった。
こうして、ミナとタケは現代に生まれ変わり、不思議な縁で再び出会い、結ばれたのだった。
彼らの愛は、時を超え、永遠に続くことを海風が約束してくれた。
新刊『アースチェンジ——近未来の警告書』では、これから訪れる地球の変革について書いています
☆☆☆スピリチュアルスクールの紹介☆☆☆
スクールに入られると、神聖な光の仲間たちとの繋がりによって、あなたのアセンションは加速され、変化を体験されるでしょう。
ほぼ毎日、記事を配信し、満月には、仲間たちと一斉ワークを行っています。
入会された方の感想はこちらにありますので、参考にご覧ください。
0 件のコメント: